仮執行宣言を取得してはじめて意味がある

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仮執行宣言がつけられると効力が異なる

債権者の「金50万円を支払え」という内容の支払督促の申立てに対して、債務者が素直に50万円を支払えば事件は終了します。
ところが、債務者が支払おうとせず放置していた場合に、債権者が期限経過前に、債務者の財産を差し押さえて強制執行できるのかといえば、それはNOです。

強制執行をかけるには、支払督促とは別に仮執行宣言の申立てをしなければならないからです。強制執行は、執行力に基づいて行われるものです。
執行力とは、債務者が支払いなどをしない場合に、裁判所の強制力により支払わせることをいいます。

この執行力は、通常の訴訟の場合だけでなく、支払督促の場合でも発生します。
これを仮執行宣言といいます。この手続きによって、債権者は支払督促を申立てた後、2カ月以内には強制執行手続きによって金銭の回収を図ることが可能になります。

仮執行宣言がついた後は、債務者から異議申立てがなされても、それだけで強制執行が止められることはありません。
債務者が強制執行を止めるには、別途その旨の手続きが必要になります。
ただ、仮執行宣言前に適法な異議の申立てがあれば強制執行を止めることができます。

仮執行宣言の申立てができる期間

仮執行宣言は、何もしないままつけられるわけではありません。
仮執行宣言を取得するには、支払督促の申立てとは別に新たな申立てをしなければいけません。
ところで、債務者は支払督促の送達を受け取った日から2週間以内に異議を申立てることができます。

つまり、例えば、7月1日に支払督促正本は送達されたとすると、7月15日までに異議申立てが認められるということになります。
この期間内に債務者が異議を申立てなかった場合、2週間を経過した日の翌日(7月16日)から30日以内に債権者は仮執行宣言の申立てをしなければなりません。

ですから、8月14日までに申立てる必要があるということになります。
なお、30日以内に申立てをしないと支払督促は失効してしまうので注意してください。
仮執行宣言の申立ては、支払督促の申立てをした裁判所に書面を提出する必要があります。
書式についても、支払督促申立書と似ており、それほど難しくはありません。

内容としては、仮執行宣言を求める旨や手数料などを記載します。
申立てが認められると、仮執行宣言付支払督促の正本が債権者と債務者の双方に送達されます。

債務者に反論の機会を与える

支払督促は債権者の書面による一方的な言い分を基に、裁判所が債務者に対して「金※万円を支払え」と催告していく制度です。
ですから、債務者にも後日反論の機会を与えないと手続上不公平になってしまいます。
そこで法は、債務者のために「異議の申立て」という手続きを設けて、債務者にも反論する機会を提供しています。

債務者は支払督促正本を受領後2週間以内に、支払督促に同封されている「督促異議申立書」を提出して反論の機会を与えてもらうように手続きを取ることができます。
つまり、この異議申立てによって、手続きは通常の民事訴訟に移行していくことになります。
また、債権者が仮執行宣言を申立てた場合は、その申立て後、仮執行宣言が出されてから債務者に仮執行宣言付支払督促が送達されます。

その場合でも、債務者は受け取った日から2週間以内であれば督促異議の申立てをすることができ、支払督促は通常の民事訴訟に移行します。
ただし、仮執行宣言付支払督促に対して異議を申立てても、別途執行停止の手続きを取らなければ強制執行(仮執行)を止めることはできないという点に注意が必要です。

督促異議の申立先は

督促異議の申立先は、支払督促を発布した裁判所書記官が所属する簡易裁判所です。
督促異議が申立てられると、通常の民事訴訟に手続きが移行していきます。
督促異議が申立てられた時点で、通常の民事訴訟が提起されたものとみなされます。

支払督促の請求額の元本は140万円以下なら、その支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所、140万円を超過する場合ならその簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所で審理が行われます。

追加費用を納める

債務者の異議申立てによって手続きが民事訴訟に移行すると、債権者が「原告」、債務者が「被告」となって審理が進められていくことになります。
そこで、債権者は訴訟にかかる手数料などの費用を改めて裁判所に納めなければなりません。

支払督促の申立費用は訴訟の半額でよいということは前に説明しましたが、訴訟になれば残りの半分を追加費用として納めることになります。
納付期限については、裁判所から債権者あてに通知される補正命令の中で指定されることになっています。
指定された期限内に納付しないと支払督促の申立自体が却下されてしまうので注意してください。